自販機

 

駅前のカラオケ店と 理科室の前の廊下の

名前のない類似性が 五月のぬるい風に吹かれて  

部屋のカーテンを揺らしたとき 

それが僕のすべてだと思えた

 

教室から見下ろす校庭と 雨の日の体育館の天井の

その生活感の無さが 僕の生活を脅かし

部屋のカーテンを締め切ったとき

それが僕のすべてだと思えた

 

無声映画みたいだった はじまりも 終わりもない

無声映画みたいだった 次第に色も抜け落ちて

無声映画みたいだった 僕はただそれをみていて

無声映画みたいだった 僕は僕を傍観して

 

そのうちに

何かが僕を引き戻し

その何かを僕は探すけど

ふたたび抜けていく

色彩の中で

自販機の釣り銭受け取り口に 

そいつは

消えて

いった