いつかこの詩を攫う風

 

初冬の風が撫でるコンビニの駐車場 投げ捨てられた缶ビール

僕が視線を落とす訳は 未だ自身も知らない

「こんなはずじゃなかった」って どの面下げて言ってんだ

赤信号に苛立ち 今日も世界に舌打ち


絶対的な星空 僕が抱いてる気まずさ

相対的な僕らは「死にたい」って言葉の奴隷だ

自分見失うには 十分すぎる程の時間

まるで自分対世界 そんな様相で

 

僕は僕であると いつか言えるのならば

それだけの存在 博打の生存だった

夜が真実を 隠している気がしたのだ

自販機の釣り銭に 精肉店のシャッターに

死んでくれるな、いつかこの詩を攫う風

 

記憶の中のカーラジオは 雨音で掻き消されて

時折微睡みの中 そんな夢をみていた

フラッシュバックした幻聴で 名前も知らない虫が鳴いて

影はいつだって饒舌 西風が絶やす情熱

 

人に認められたくて 全てを否定して

優しい人になりたくて 優しい人を嫌った

手を差し伸べてくれた 人すら廃忘して

まるで被害者みたいな そんな逃走で

 

僕は僕であると いつか言えるのならば

それだけの存在 博打の生存だった

朝日が偽りを 暴く気がしたのだ

新聞の配達員に 病院の待合室に

死んでくれるな、いつかこの詩を攫う風

 

「頑張れ」なんて言えないよ

かけるべき言葉なんて一つもないよ

だけど何も言わないなんて

卑怯じゃないか 卑怯じゃないか

 

君は君であると いつか言えるのならば

それだけでいいよ それ以外何もいらないよ

こんな日々に 終わりが来た時

ただ風の匂い 嗅いでいたいだけ

生き延びるべきだ、いつかこの詩を攫う風