ランウェイ・ランナウェイ

 

頭ん中じゃ浮かんでるはず、この部屋

焦げた歴史が、手を伸ばして支えてる

従えそびれたらそれまでの、明日には、高圧的に

一旦セーブしてから、ルーペで太陽を見る

 

常にこの街の先頭にいる、けどなにも始まらない

僕のうしろに沢山の人が並ぶ、けどなにも始まらない

並ぶところ間違えました、なんて今更言えない

どんどん重く、どんどん重くなるから

すべてが均一になれば、夕焼けはもっと赤い

 

バスでは、いつも、手汗が、止まらない

さんずいも、伊達じゃないな、とか言ってみた

乗ったら、降りたくない、降りたら、乗りたくない

運転手さん、このまま、向かってください、知床。

知床!?

ブラジルの!

ブラジルの!?

もっと飛ばして

高速道路を飛ばして

高速道路化した国道を飛ばして

法定速度を一応守りしつつ飛ばして

法定速度を大幅に超過したスピードで飛ばして

やっぱり危ないからやめて

探してるのは、たぶん見つからないもの

たぶん見つからないから、探しているの

そんな風に意味ありげに街を捨てて

しかめ面と生意気の丁度間の顔をして

Suicaの残高に震えて

額も見ずに旅立って

冷ましたコーヒーをシンクに捨て

放送禁止用語に寄り添って

もう見てないテレビを消して

とはいえ寂しいからまた点けて

基本無料に課金して

基本課金に無料して

初回無料だからとりあえず試して

更新される前には忘れずに解約して

結局忘れて980円払って

言葉は権威だと知って

思想は権威だと知って

権威を以て

権威主義を批判して

それならもう いいから黙れ

構造主義と燃え

ヒューマニズムを炉へ

オントロジーとして震え

物質として飛ばせ

状態として交わせ

古池や 蛙飛び込め

色めき立つ人いきれに消え

出店が煽る生にわなないて

破裂音が残した静寂に勃起して

ラッシュを率いて蜘蛛の糸へ向かえ

性欲を性的欲求とか言え

とりあえず言え

言えるなら言え

言えなくとも言え

言えと言えと言え

さもなくば言え

いえいえどうも懇切丁寧に言え

そういえば彼女とか欲しいね

その「とか」の所在を探れ

キュートアグレッション吃って

俺の心にキリ突き刺して優しさを引き摺り出すな唆れ

「愛してる」が血管を流れ

そのまま銃創を指でなぞれ

鮮血を蜜みたいに有難がって

もっとくれと悶え

求める人は、求めるばかりで吠え

与える人は、与えるばかりで狂え

カニバリズム祟って

卒業写真の右上で踊れ

それを傍目に真ん中で泣け

マウスカーソル眉間に合わせ

Escでどこまでも逃げ

パーソナライズ誇れ

架空請求全部払って

数分前のやけに冷たいマスク呪って

袋お願いしますに雪が降り積もって

果てには散れ

いつかは散れ

否が応でも散れ

もうどうしたらいいか分からないくらい散れ

その衝動もろとも散れ 

ショートショートの最後みたいに散れ

星新一

ナレーションは俺に任せて歌え

神様様のお好きなタイミングで世界終われ

やりたいことやって死ね

期待よりでかい不安抱え

西瓜よりでかい林檎抱え

寝て

起きて

微睡んで

魘されて

起きて

寝れねえ

寝て

寝て

寝て

 

 

僕らいつもそう 安い酒と高望み

敷かれた滑走路に 言葉の粒滑らせ

 

運転手さん、僕はどこまで行けますかね

降車ボタンが最後の乗客として無愛想に

高座から地方都市のネオンを望む

バスではいつも、手汗が止まらない